大判例

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東京地方裁判所 昭和29年(ワ)7664号 判決

城南信用金庫

訴外橋本友孝の本件債務の連帯保証人としての被告の責任について考えるに、証拠によれば、右友孝は金八十五万円の消費貸借契約締結に当つては原告金庫馬込支店に単独で至つて契約し、金二十万円の金借については自己の連帯保証人として預り中の被告名の印章を使用して被告名を署名押印したことが認められるから、被告が自ら本件保証契約を締結したとの原告の主張事実は到底認め難い。そこで本件保証契約は被告の表見代理人によつてなされたとの原告主張について考えるに、証拠を綜合すれば、橋本友孝の妻つるは被告の娘であり、友孝、被告共菓子の販売業を営み、被告は友孝の家の裏続きに居住しており、戦時中より終戦後に亘り被告方の配給物資受領等については橋本方においてこれを扱い、その為被告方の印鑑を預つていた。当時原告金庫馬込支店の支店長代理をしていた橋本造酒蔵は被告の親戚で右事情を知つていたので、本件金借について友孝に被告の代理権があるものと考えこれを確める方法をとらず、且つその印鑑につき真実被告の印鑑であるか否かにつき調査をしなかつたことが認められる。ところで一定の範囲内において代理権を有するものが、他の行為につき代理権を有するが如く振舞つた場合において相手方として代理権ありと信ずる正当事由は、同種の行為の場合より異種の行為の場合の方が一層厳格に要求せられるのが相当である。本件において橋本友孝の有した被告の代理権は、戦時中並びに戦後にかけての隣組関係、配給物受領関係の諸行為に対する代理権であり、日常生活中においても特殊の部門というべく、社会通念に照らせば寧ろ友孝よりも友孝の妻つるにおいてなすべき行為が多いものと考えられる。従つてかかる性質の行為と異質のものであること明らかな営業上の金借について、友孝が被告の代理権を有すると信ずる正当事由としては、その身分関係、居住関係のみをもつては足りないものといわなければならない。少なくとも原告は金融を業とするものであり、本件契約に当つて使用する印鑑は被告の通常使用している印鑑であるか否かに留意する義務はあるものといわなければならない。ところが昭和二十七年七月五日付契約に使用した印鑑は訴外波田野豊の使用する印鑑であり、同年九月二十八日付契約に際して使用した印鑑が前に使用した印鑑と異ることは一見明瞭である。そうとすれば原告において橋本友孝に本件保証契約締結の被告代理権があると信ずるについては過失があり、正当事由があるとは認め難いものといわなければならない。してみると原告の主張事実はいずれもこれを容れ難いものであるから、原告の請求は失当であるとしてこれを棄却した。

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